
2025年12月1日 –
日本全国で増加傾向にある「空き家」。この現象は地域社会にとって大きな課題であると同時に、新たな可能性も生み出しています。日本の物件を海外の人に販売するための仲介サービスも増えるなか、外国人による空き家購入について一般の人々がどのように考えているのかを把握するため、2025年9月に全国1,000名を対象とした調査と、特定の回答者を対象にした追跡調査を実施しました。
今回の結果からは、文化的価値観、国外からの影響に対する慎重な姿勢、そして地方の将来への深い不安が複雑に絡み合った意識構造が浮かび上がりました。政府は空き家対策にさまざまな施策を打ち出していますが、多くの回答者は「十分ではない」と感じており、外国人への売却を容易にすることにも慎重な姿勢を見せています。
こうした背景には、投機目的や管理不全への懸念といった実務的な問題に加え、日本の土地や地域文化、コミュニティのあり方を守りたいという広い意味でのアイデンティティ意識が存在します。本調査は、空き家問題という日本の重要な社会課題に対して、一般市民がどのような考えを持っているのかについて掘り下げ、示唆を与えるものです。
主な調査結果
1. 空き家の外国人所有は「日本にとって好ましくない」という意見が多数派
回答者の4割以上が外国人による空き家所有を否定的に捉えており、肯定的に見る人はごく少数でした。土地や地域文化、コミュニティを守りたいという強い意識が背景にあります。
2. 外国人への売却は極めて不人気
空き家を「外国人には売りたくない」と答えた人が全体の約半数に上り、最後の手段としても検討しないという声が目立ち、保守的な姿勢を示しています。
3. 最大の懸念は投機、管理不全、そして安全保障
外国人購入者による放置や不適切利用、地方の衰退加速、資産流出や地域のコントロール低下につながるとの懸念が多く寄せられました。これらの不安が外国人への売却に強い抵抗感を生んでいるようです。
4. 土地への強い愛着が大きなハードルに
相続した土地や先祖代々の不動産を外国人に譲ることに抵抗を感じる人が多く、実務的な問題だけでなく、文化的・象徴的な理由も大きく影響していることがうかがえます。
5. 地方の衰退への危機感は強いが、外国人による再生は解決策と見なされていない
小さな町や村の人口減少を懸念する人は3分の2に達する一方、その不安が外国人所有者の歓迎につながるわけではなく、「国内主導の再生」を望む声が優勢です。
6. 政府の空き家対策は「不十分」という評価が多数
約7割が現行の支援策は不足していると回答。海外の買い手に門戸を広げるより、日本国内向けの対策を強化すべきという意識が読み取れます。
7. 外国人による購入・改修の緩和には慎重な姿勢が目立つ
最も多いのは「現状のままでよい」という回答で、大きな割合が判断を保留。外国人参入のメリットに対して慎重さがうかがえます。
8. 忌避感の背景はメディアよりも「自身の価値観」
追跡調査では72%が、自分の価値観や信念が懸念の主な理由だと回答。外部情報というより、個人に根付いた文化的感覚が影響していることがわかります。
9. 「長期在住の外国人」に関しても慎重な姿勢
状況次第では再検討するという声が約半数ありますが、依然として完全拒否の層も存在します。居住年数よりも「文化的な安心感」が重視されている傾向が見られます。
10. 外国人所有への規制強化に強い支持
8割以上が自治体による規制強化を支持しており、地域の土地やコミュニティを守るための厳格なルールを求める声が非常に強い結果となりました。
調査方法
外国人への空き家売却に対する日本人の意識を把握するため、2025年にセルフ型アンケートツール「Freeasy」を用いて2回の調査を実施しました。
第1回調査は2025年9月5日に実施され、20〜99歳の全国在住者1,000名を対象としました。回答者は、年齢・性別・職業・収入・居住形態など、幅広い属性から構成されています。
第2回調査は2025年10月9日に実施され、初回で「外国人への空き家売却に反対」と回答した100名を対象としました。フォローアップでは選択式に加えて自由記述も取り入れ、意見や背景をより詳しく掘り下げました。
これらの調査を通じて、空き家の外国人所有に対する日本人の懸念や意識を多角的に明らかにしています。
調査結果
スクリーニング調査
Q1 外国人による空き家の所有は、日本にとって良いことだと思いますか?悪いことだと思いますか?

500名の男性と500名の女性が回答
約42.9%が外国人による空き家所有を悪いことと捉え、約33.7%がどちらとも言えないと答え、わずか7.5%が良いことと見なしており、約15.9%がわからないとしています。全体として、否定的または不確実な見解が大多数を占めています。
男女別では、男性は肯定的な意見が約10.4%と女性の約4.6%より高く、否定的および判断保留の割合はほぼ同程度です。
Q2 あなた自身が手放したい空き家を持っているとしたら、外国人への売却を検討しますか?

500名の男性と500名の女性が回答
空き家を外国人に売ることを「検討もしたくない」と答えた人が最も多く(43.6%)、次いで「検討はするが日本人を優先」(30.7%)、不明が20.2%、そして「ぜひ検討したい」が5.5%にとどまることを示しています。全体として、完全な拒否が多数派であり、条件付きの検討意欲は高いものの、積極的な賛同はごく少数です。
Q3 空き家を外国人に売却することに消極的または反対な理由はなんですか?(複数回答可)

366名の男性と377名の女性が回答
最も多い反対理由が「投機や放置の心配」(49.9%)および「安全保障や資産流出の不安」(48.5%)であり、次いで「地域の文化や習慣を大事にしてほしい」(29.6%)、 「契約や手続きが複雑になりそう」(27.9%)、 「先祖代々の土地を譲ることへの抵抗」(24.4%)が続いています。全体として、経済的・安全保障的な懸念が主な阻害要因となっているようです。
男女別では、「契約や手続きの複雑さ」を懸念に挙げる割合が女性で31.0%、男性で24.6%と、女性の方が5%以上高くなっています。
Q4 ご自身で地方に住むことを検討していますか?

500名の男性と500名の女性が回答
22.5%がすでに地方に住んでおり、20.7%が機会があれば住みたいと答えている一方で、23.3%があまり住みたくない、29.2%が全く住みたくないとしています。全体として、約43%は地方居住に前向きか現状該当するものの、約52%は消極的です。
性別で見ると、女性は「機会があれば住みたい」が18.6%に対し男性は22.8%と大きな差はない一方、「あまり住みたくない」が女性26.0%に対して男性20.6%、「全く住みたくない」が女性32.4%に対して男性26.0%と、女性の方が5%以上高い割合で地方居住に消極的です。
Q5 地方に住みたくない理由は何ですか?(複数回答可)

233名の男性と292名の女性が回答
地方に住みたくない理由としては、不便な交通手段(約70%)、医療施設の不足(44%)、仕事機会の少なさ(26%)が最も多く、次いで地域文化や習慣への配慮(24%)、イメージの悪さ(21%)、孤独感(20%)が続きます。全体として、インフラや実務面の問題が主な懸念です。
性別で見ると、女性は医療施設不足を理由に挙げる割合が約48%と男性の約39%を、仕事機会の少なさが約30%と男性の約22%を上回っており、これらの差は顕著です。
Q6 地方で必要だと感じるものは何ですか?(複数回答可)

500名の男性と500名の女性が回答
地方に最も必要とされるのは交通インフラの整備(68.5%)、医療体制の充実(53.2%)、雇用の機会拡大(50.8%)であり、次いで地域交流の場や教育機関の充実が約21%と続き、特に必要ないとの回答は12.1%でした。全体として、インフラと実務的サービスが最優先事項となっています。
男女別では、女性は医療体制の充実(女性56.6% 対 男性49.8%)や交通インフラ(女性72.6% 対 男性64.4%)を重視する割合がやや高く、男性は雇用機会(男性52.0% 対 女性49.6%)を強調する傾向が見られます。
Q7 地方は、伝統の保存とインフラの近代化のどちらを優先すべきだと思いますか?

500名の男性と500名の女性が回答
回答データは、55.5%が伝統保存とインフラ近代化の両立を望み、近代化重視は約19%(「どちらかといえば」11.5%+「強く」7.5%)、伝統重視は約13%(「強く」3.7%+「どちらかといえば」9.6%)にとどまることを示しています。約12.2%が「わからない」と回答しており、大多数は二者択一ではなく両方を重視することを選んでいます。
男性は伝統を「どちらかといえば優先すべき」と答える割合が約12.4%と女性の約6.8%を上回り、一方で女性は「両方をバランスよく重視すべき」が約58.4%と男性の約52.6%より高くなっています。他の選択肢では性差が5%未満であり、男女とも概ね同様の見解を示しています。
Q8 日本の小さな町や村の衰退について、どの程度懸念していますか?

500名の男性と500名の女性が回答
回答データは、小さな町や村の衰退について「非常に」または「ある程度」懸念していると答えた人が合計で約64%(21%+43%)を占め、「あまり」または「全く懸念していない」が約22%、「わからない」が約15%です。全体として、少なくとも一定の懸念を抱く人が大多数を占めています。
男女別では、「わからない」と答えた割合が女性で約17%に対し男性は約12%と、女性のほうが不確実性が高い傾向があります。
Q9 政府による空き家対策の支援は十分だと思いますか?

500名の男性と500名の女性が回答
約68%が政府の空き家対策支援を不十分と感じ、約12%が十分またはある程度十分と答え、約20%がわからないと回答しています。全体として、支援が不足していると考える人が圧倒的多数です。
男女別では、男性は「ある程度は十分だと思う」が約12.8%に対し女性は約7.8%と楽観的な傾向があり、女性は「わからない」が約23.0%と、男性の約16.8%を上回っています。
Q10 外国人が空き家を購入・改装しやすくするべきだと思いますか?

500名の男性と500名の女性が回答
データは、「現行制度のままでよい」が40.4%で最多を占め、「ぜひ・ある程度そうするべき」を合わせた賛成派が27.6%、「わからない」が32.0%となっています。全体として、現状維持と制度緩和が拮抗する中、約3割が判断を保留しています。
性別では、女性の「わからない」の割合が36.8%と男性の27.2%を大きく上回る一方、制度緩和の賛否や現状支持の割合は男女差が5%未満で、性別に関わらず同様の意見分布となっています。
フォローアップ調査
Q1 手放したい空き家を所有していると仮定して以下の質問にお答えください。(自由回答)
なぜ外国人に空き家を売却したくないのか、その理由を教えてください。

自由回答の結果からは、外国人への空き家売却に対する態度が圧倒的に否定的であることが明確に読み取れます。回答者のおよそ3分の2が、何らかの形で反対や懸念を示しており、中立的・実務的な理由(「価格上昇を待ちたい」「リノベーションの可能性がある」など)を挙げる人はごくわずかでした。
最も頻繁に現れたのは、外国人が日本の社会規範や地域のマナーを守らないのではないかという不安です。「ルールを守らない」「マナーが悪い」といった表現が多く見られ、地域の秩序や調和が損なわれることへの懸念が強く示されました。
次に多かったのは犯罪や治安に関する心配で、「犯罪に利用されるのでは」といった声が繰り返し挙げられました。また、文化的・言語的な違いへの懸念も高く、「意思疎通が難しい」「隣人との摩擦が起きそう」「生活習慣が合わない」といった指摘が多く寄せられ、特定の経験よりも“異文化によるトラブル懸念”が不安の主因になっている様子がうかがえます。
さらに少数ながら、国家的・領土的な観点から外国人への売却に抵抗を示す回答も見られました。「日本の土地は日本人が持つべき」「日本のアイデンティティが失われる」といった内容で、象徴的な意味合いにまで踏み込んだ不安を表しています。そのほか、Airbnbのような短期利用・投機的利用への反発、交渉時の言語問題、売却後の利用実態への不安、支払いへの不信など、実務的なリスクを挙げる声も一部存在しました。
全体として、感情的な嫌悪感、社会的保守性、実務的リスク回避といったさまざまな理由が複雑に絡み合ってはいるものの、方向性はほぼ全面的に否定的です。「特にない」「わからない」といった一見中立的な回答でさえ、積極的な受容姿勢とは言い難く、慎重さや不安が背景にある場合が多く見られました。
Q2 もし購入者が長期的に日本に住んでいる外国人だった場合、「空き家を売却したくない」という意見は変わりますか?

44名の男性と56名の女性が回答
回答者のほぼ半数(46%)が「長期在住の外国人なら状況次第で再検討する」と答えており、38%は「意見は変わらない」と答えていることを示しています。少数が「ぜひ再検討する」(8%)または「わからない」(8%)と答えています。
Q3 空き家の外国人所有について、自治体がより厳しく規制すべきだと思いますか?

44名の男性と56名の女性が回答
データは、海外所有の空き家に対する規制強化を望む声が圧倒的であることを示しています:もっと厳しい規制を求める層が43%、ある程度の強化を求める層が41%で、現行で十分だとする意見はごく少数(6%)にとどまります。全体として、規制の強化を支持する傾向が明らかです。
Q4 外国人への売却に対して不安を感じる主な理由として、最も当てはまるものを選んでください。

44名の男性と56名の女性が回答
データは、外国人への売却に対する主な懸念理由が「自分自身の考え・価値観」であることを示しており、その割合は72%と圧倒的です。次いで「メディアや世論の影響」(14%)、「家族や地域の人からの助言」(8%)、「過去の経験」(6%)と続きます。
総じて、本調査は外国人による空き家所有への反対が単一の理由ではなく、治安、社会規範、文化的アイデンティティといった多面的な要因によって生じていることを示しており、国民は外国人購入者に対して厳しい姿勢であることが浮き彫りになりました。
まとめ
日本の空き家問題は経済的な側面から語られることが多いものの、本調査結果はそれ以上に深い社会的・文化的背景が存在することを示しています。多くの人にとって空き家は単なる未利用資産ではなく、家族の歴史や地域コミュニティの記憶、そして何世代にもわたり受け継がれてきた街並みそのものを象徴しています。こうした感情的な重みが、外国人による空き家所有が敏感なテーマであり続ける理由の一つと言えます。
地方の人口減少が進み、小さな町が生き残りを懸けている状況であっても、多くの回答者は外国人購入者を解決策としては見ていないようです。投機目的や管理不全、安全保障上の不安、地域文化の喪失といった懸念が根強く存在しています。
本調査から浮かび上がるのは、「地域を再生したい」という強い思いがありながらも、「その再生は日本人主導で行われるべきだ」という意識です。多くの人が望んでいるのは、交通や医療などのインフラ整備、政府によるより強力な支援、そして日本の家庭が古い家屋を維持・改善しやすくするための政策です。また、地域文化や生活様式に沿った形での発展を求める声も目立ちます。
空き家対策が全国的な注目を集める中、本調査は国民の意識を正確に把握する重要性を改めて示しています。成功する空き家政策には、地域の再生と文化の継承の双方をどのように両立させるかという視点が不可欠。日本の風景とコミュニティを次世代へ引き継ぐためにも、住民の価値観を踏まえた慎重で持続可能な取り組みが求められています。